色見えで
色見えで うつろふものは 世の中の 人の心は 花にぞありける
古今集 恋五・七九七
小野小町の和歌です。
以前ブログにあげた一首は、恋の渦中にある切ない思いを詠ったものでした。
この一首は、思う相手の心が、色-姿かたちには表れないが、うつろい、褪せていってしまうことを察することはできて、それを花にたとえて恋の儚さを詠ったものと僕は解釈しています。
これだけを単体でみると、必ずしも恋のことだけを詠ったものではなく、もっと根源的な人の心の移ろいを表したものとも思えますが、「恋五」に収録されていることからすれば、やはり恋を詠うものと考えてよいのでしょう。
思いつつ・・・はとてもチャーミングで魅力的な和歌ですが、ここに詠われている恋の虚しさ、侘しさは並べて読むとグッとくるものがあります。 tanaka-sr.hatenablog.jp
自分のその時の心の持ちようで、そのときそのときの受け止め方ができるのも、ストレートに詠む小野小町の和歌の魅力の一つです。
花の色は・・のように超絶技巧を詠みこんで、さらに読む人の心に迫る和歌もすごいですが、個人的には 色見えで や 思いつつ の二首にある素直な心を詠んだものが好きです。