Yellow Brick Road
オズの魔法使い(The Wizard of Oz)といえば、だれもが知る名画です。
1939年に公開されたアメリカ映画で、ドロシー役のジュディ・ガーランドが歌う劇中歌「Over The Rainbow」はみんな一度は耳にしていると思います。
ドロシーは、虹の向こうにはきっと自分が理想としている場所があり、そこに行くことを夢見ています。
愛犬トトと竜巻で飛ばされた後、見知らぬ場所にいて途方にくれます。
この時「Toto, I've got a feeling we're not in Kansas anymore(トト、ここはカンザスじゃないみたいよ)」とドロシーが言うのですが、このセリフは映画史上もっとも有名なセリフの一つとなっています。
アメリカでは、状況が大きく変わってしまったことに遭遇した驚きや戸惑いを表現するときにこのセリフを使うのだそうです。
そしてシャボン玉に乗った「北の良い魔女」が現れ、「Follow the Yellow brick road(黄色のレンガ道をたどるように)」、そうすれば、エメラルド・シティにいるオズの魔法使いがカンザスに戻してくれるだろう、と教えてくれ、彼女は歩き出します。
有名なオズの魔法使いのストーリーで、考えのないカカシ、心がないブリキ、勇気のないライオンと出会い彼らに欠けているものを見つける手伝いをしながら旅をつづけ、その中でドロシー自身も自分に足りなかった大事なものを見つけて故郷に戻り、大団円となります。
黄金の道の果てにあるエメラルド・シティは、まさに夢の国なんですが、カカシ達との旅の果てに大きく成長したドロシーはカンザスに帰ることを選択し、そして退屈だと思っていたカンザスこそが、夢見ていた虹の彼方にある虹の橋が終わるところであったと気づくのです。
ちなみに、この時にドロシーがつぶやく「There's no place like home(お家が一番だわ)」というセリフも、Toto, I've got a feeling we're not in Kansas anymoreと同様にアメリカの人々から愛されている引用句となっています。
このお話は、いろいろと個性的は登場人物があらわれ、困難と立ち向かい、一歩一歩目的へ進んでいくストーリーだけで十分に楽しめます。
が、大人になってから観ると、人の成長とは自分自身と周囲を正しく認識する能力を身につけることなのだと分かります。
この映画がアメリカ国民に与えた文化的影響は大きいようで、前掲の2つの引用句のほかにも引用されているものがあります。
例えば、エメラルド・シティへ続く Yellow brick road もそうです。
エルトン・ジョンの不朽の名作 Goodby Yellow brick road では「富と名声に続く黄金の道」として引用されていて、この成功と名声の道に別れを告げようと歌っています。
スターダムに浮かれるエルトンに対して、長年作詞家として二人三脚で作品を作り続けてきたバーニー・トーピンが「最初のころに戻ってやり直そうよ」という自戒を込めて書いたものと言われています。
黄色いレンガ道と和訳されていた国の住民としては、こんな深い意味にはたどり着かないですよね。
エルトン・ジョンの楽曲はメロディがとにかく美しいのでそれで満足してしまいますし、そもそも黄色いレンガ道って日本人には馴染みがないですから。
ただ、当時、誰にも理解されない大きな孤独を抱えたエルトンにとっては、この黄金のレンガ道をただ進むしかなかったというもの真実の一端のようです。