田中労務経営事務所  業務日誌

埼玉で社会保険労務士をやっています。日々の業務にまつわるあれこれを綴っていきます。

運送会社と最低賃金

f:id:tanaka-sr:20190909125421j:plain

今年も埼玉県は、10月1日に地域別最低賃金が改定されます。

全国の地域別最低賃金も出そろいました。

pc.saiteichingin.info

 

運送会社では最低賃金をベースとして基本給を決めているところが少なからずあります。

こういった会社では最低賃金が改定されるたびに、否応なく賃上げをしていくことになります。社会保険労務士事務所の実務としては、報酬月額変更届失念することのないよう準備をしておく必要があります。

注意点としては、家族手当や皆勤手当、無事故手当を支給している会社です。

家族手当・皆勤手当はそもそも最低賃金の対象として除外されていますし、無事故手当は算入可能ではあっても事故発生により不支給となったときに最低賃金割れとなる可能性があるので、できうる限り基本給で最低賃金をクリアしておくことになります。

 

問題は、多くの会社で採用されていると思われる固定残業手当で、基本給が上がれば固定残業代も1.25倍で上げていかなくてはならないということです。

会社の経営状態や燃料費、またこの先の見通しなどとは無関係に人件費が自動的に、しかもここ数年の上がり方からすると不安を通り越して既に経営を圧迫しているところもあるようです。

 

歩合制を導入している会社では、時間外労働に対する割増賃金は「時間単価 × 0.25」でよいので、先に上げた固定給型の賃金体系よりは賃上げ圧力のインパクトは小さくなります。

1点注意しなければならないのは、歩合給を総労働時間で除した金額が最低賃金との比較対象となる時間給になりますから、実労働時間が長時間化している(長時間化している会社が多いですよね)と最賃割れの可能性があることです。

 

このところの人手不足である程度人件費が上がってしまうことは、どの社長さんも覚悟していることと思いますが、このペースで上がっていくことは想定外ではなかったでしょうか。

運送業界の労務管理は自社だけの努力では解決できず、荷主さんとの契約関係が大きな要素となることは自明のとおりです。

ここで消費税も上がることで、諸経費の負担も重くのしかかるなか、産業の血液ともいうべき運送業界には頑張っていただきたいです。

 

我々社会保険労務士も、更に研鑽を積んで経営と快適な労働環境確立の一助になるよう努力を怠すことはできません。