田中労務経営事務所  業務日誌

埼玉で社会保険労務士をやっています。日々の業務にまつわるあれこれを綴っていきます。

任意適用申請の手続き

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社会保険の任意適用申請です。

高い、高いと評判の社会保険(健康保険・厚生年金保険)ですが、下記の事業所は加入が義務付けられています。


(1)法人事業所で常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用するもの
(2)常時5人以上の従業員が働いている事務所、工場、商店等の個人事業所


ただし、5人以上の個人事業所であっても、サービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等)や農業、漁業等は、その限りではありません。

社会保険労務士事務所も「サービス業の一部」に当たり、100人いても加入義務がありません。なんとなく不思議感があります。

 

どうしても加入したいときは、従業員の半数以上が厚生年金保険等の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けた場合は、個人事業所でも社会保険の適用を受けることができます。


ただ、気を付けるべきは、認可を受けたら従業員全員が加入することになるということです。

保険給付や保険料は、適用事業所と同じ扱いになります。

当の個人事業主は「事業主なので」加入できません。
www.nenkin.go.jp

申請時の必要書類としては、

① 任意適用同意書(従業員の2分の1以上の同意を得たことを証する書類)
② 事業主世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)※1
③ 以下の5種類の公租公課の領収証(原則1年分)(コピー可)※2
 ・所得税国税
 ・事業税(道府県税)
 ・市町村民税(市町村税)
 ・国民年金保険料
 ・国民健康保険

※1

・事業所の所在地が個人事業主の住民票の所在地と異なる場合は「賃貸借契約書のコピー」など事業所所在地の確認できるものを別途添付
・住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)は、提出日から遡って90日以内に発行されたもの
※2

添付する公租公課の領収証について不明な点がある場合には年金事務所にお尋ねください。

結構大変です。

そして、「厚生労働大臣の認可」を受けて初めて適用を受けられるので、年金事務所等に提出した日に適用とはなりません。

規模(人数)にもよりますが、大体1~2週間後の日になるようです。

 

 

 

さて、個人事業主及び、個人事業主と生計を同じくする(同居ってことですね)親族は、原則として社会保険の被保険者となることはできません。 

 

ただし、同居でも加入できる場合があります。

 

h任意包括事業所における専従者にかかる被保険者資格の確認方法及び現物給与
の取り扱いについて
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この点、平成22年11月29日の疑義照会(回答)では、

「 貴見のとおり総合的に見て判断するしかないと思料する。

しかし、【昭和 36 年5月31日社会保険審査会判例】において同居の配偶者における場合 「事業主と同一の世帯にあって生計を一にしている場合においては、民法 752 条の相互協力扶助の立場にあり、夫と協力して当該企業目的の実現のため、家事、業務面の業務のいかんを問わず、あらゆる面で夫に協力することは当然の理であり、夫に「使用せらるる者」としての支配従属関係に立つという明確な反証がない限り、当該事業所に「使用せらるる者」ではないとみるの が妥当」とあるとおり、上記「但し書き」以降は個人事業所の専従者は被保険者となれないという原則のあくまで「例外」であるという認識を念頭に置き、事例を個別具体的に慎重に判断いただきたい。

特に事業主と住所を同一にする家族に関しては

・事業主の指揮命令に従って業務を執り行っているか

・賃金の支払(賃金計算、締め日、支払日等)等が他の従業員と同様であるか

・出勤簿、賃金台帳(タイムカード等)が完備してあり、就労時間、休息時間が他の従業員と同様である旨が確認できるか

所得税法上、雇用保険法上の取扱いはどのようになっているか。

等々を鑑み、非常に困難であると思われるが、総合的に勘案し判断していただきたい。」

とあります。

 

昭和36年の審査会判例ですから仕方ないですが、夫と協力して当該企業目的の実現のため、家事、業務面の業務のいかんを問わず、あらゆる面で夫に協力することは当然の理」って令和の人には理解されそうにありませんね。

 

なので、別居の親族については「事業主と生計を同一にしている」と明確反証がない限り社会保険に加入できそうです。

もっとも、その家族へ支払う給与を「専従者給与」として確定申告していたら、ダメですけどね。