田中労務経営事務所  業務日誌

埼玉で社会保険労務士をやっています。日々の業務にまつわるあれこれを綴っていきます。

保育士宿舎借り上げ支援事業 → 社会保険料

f:id:tanaka-sr:20190815200523j:plain

厚労省では、平成27年4月から保育士宿舎借上げ支援事業を実施しています。

この事業は、待機児童問題に対応するため、保育士の確保を目的として国、都道府県、市区町村が保育士の宿舎を借り上げるための費用の一部を支援することで保育士の就業継続及び離職防止を図り、保育士が働きやすい環境を整備することを目的としています。

f:id:tanaka-sr:20190815195152j:plain

大都市圏ではこの制度を利用して近隣から保育士を集めていますが、半面保育士の流失による人手不足が地方に生じ、実施する自治体と実施していない自治体との間で軋轢が生じていることが、地方の保育士不足に拍車をかけているという声もあります。一方、本制度を利用する保育園では借上げにかかる費用の負担が想定外に重く、資金の工面に四苦八苦している現状もあります。

 

本制度もいつまで行われるのか自治体によって異なるようで、世田谷区では「平成27年度から平成32年度(令和2年度)」までの時限的措置と明記しています。

この措置を受けられなくなった保育士が、そこからは全額の家賃を自己負担して勤務を続けることができるのか、ちょっと心配です。

今年10月からの保育料無償化が自治体に与える影響も大きく、借上げ宿舎支援事業をやめて給食費自治体が負担する方向で検討しているところあるようです。

 

 

さて、本制度の適用を受けた職員は、「住居の利益」を受けます。

これ、社会保険料の対象になる現物給付となる可能性があるのですが、きちんと算定して申告していますでしょうか。

 

従業員が会社等から社宅等の借上げ宿舎を借りていると、会社はその従業員に対して、利益を供与していることになります。社会保険では、従業員が得ている利益を一定の方法で通貨に換算し、その相当額を報酬に合算をして標準報酬月額を決定することになります。
標準報酬月額に合算する現物給与の種類には、「住宅の貸与」「食事」「自社製品」「通勤定期券」などがあります。自社製品や通勤定期券など「モノ」で支給される場合は、原則として時価で換算して合算します。

住宅や食事を現物で支給する場合は、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて通貨に換算します。現物給与の価額については、都道府県ごとに異なり、また毎年度見直されます

www.nenkin.go.jp

 

上記の表は、勤務地の事業所所在地で判断します。

埼玉県の社宅に住んでいても、勤務地が東京なら東京都の価格(1畳当たり2,590円 令和元年度)で算定します。

なお、社会保険の現物給与の価額の計算にあたっては、居間、寝室、客間、書斎、応接間、食事室など「居住用の部屋」が対象になります。なお、畳のない部屋については、1.65平米を1畳として換算します。
反対に、玄関、台所(炊事場)、トイレ、浴室、廊下などの居住用以外の場所、あるいは営業用に使用している場所は面積に含めません。

 

例えば、6畳二間の2Kアパートの宿舎だった場合、2,590円 × 12条 =31,080円が居住の利益となり、賃料・利用料を全く徴収していなければその金額全額を含めて標準報酬月額を算定して届出ます。

社宅費用の全部または一部を本人が負担している場合は、「現物給与の価額から計算した金額」と「本人の負担額」の差額「報酬」に合算します。

ですから、この金額以上を徴収していた場合は、住宅の利益はないことになります。

 

なお、現物給与の価額が改定されたときは、固定的賃金の変更とみなされ、月額変更の判定の起算月になります。社宅を社会保険上の現物給与として届け出ている事業所の方はご注意ください。

 

労働保険料に関する取扱いは、少し異なります。

また、所得税法上も課税所得となることがありますが、このあたりは次回更新でアップしておきたいと思います。