難しさと醍醐味
俗にいう「第3号業務」ですね。
コンサルティングです。
実に難しい。
特に最近は「人を大切にする労務管理」とか「快適な職場環境を構築してES(従業員満足度 Employee Satisfaction)を上げることが生産性向上になる」と言われます。
一方、一部で「和をもって尊し」とする日本的な労働慣行が崩れて個人主義が進み、成果主義であったりとか、自分さえよければよいと考える従業員が増えてきたりとか、組織を維持するために厳しいルール管理をする必要もあったりします。
私たち社会保険労務士の仕事は、顧客である事業主さんと一緒に、その事業所にとって最適解となる労務管理を考え、提案し、維持していくことなのだと、考えています。
最近、保育園の園長先生とお話しすることが多いです。
28日にも、埼玉県少子政策課様と埼玉県社会保険労務士会とで進めている事業で、滑川町にある社会福祉法人立保育園さんへ2時間の相談業務に行ってきました。
処遇改善加算制度についてのご相談です。
処遇改善加算制度はよくわからないけど、保育に関しては自信をもって行っていますと胸を張っておっしゃられていました。
この園長先生は、無認可保育所を長年やってこられた方で、しっかりした保育理念と信念がその言葉から感じられ、僕も勉強になりました。
また、職員さんもノビノビと楽し気にお仕事をされていて、こういう環境なら通園する子供たちも良い子に育つだろうなと感じました。
これとは別の保育園では、園の方針に従わず、自分本位の行動をしたり自分の利己的な考えを他の職員に押し付けたりする「暴れる職員」に悩まされ、あげく秩序維持の必要性から厳しい労務管理を行おうとする相談もあります。
甘々な管理をして職場秩序を維持できなくなり、「仕事のできる人から止めていく」という悪循環にはまっては元も子もありません。
言うことを聞かない従業員に対しては懲戒処分をもって厳しく対処し、雇用契約の本旨である労働義務の履行を追求するということも、ある場面では当然必要です。
職場秩序を守ることは、真面目に、普通に、やる気を持って働いている従業員を守ることにもなりますし、働きやすい職場環境を作ることにもなります。
これはどちらが正しいという問題でもないのですが、最終的には「理念への共感」や「目的の共有」といったことをきちんとしているのかどうなのかということになってくるように感じます。
統制管理や懲戒処分を裏付けとした支配的な労務管理を行うとしても、その前提として、従来「社会人としての常識」といわれていた遵法性、協調性、従順性を「なぜ必要なのか」という視点でしっかり理解させることを怠り、「ダメだから解雇」とか「はい、始末書」という処分をしても溝は深まるばかりで、結局誰も得をしないことになってしまいます。
僕も若いころは、従業員に勝手な判断や行動をさせない統制管理を行うような就業規則を作ったりしていた記憶があります。
それでも当時は、現代に比べて労働者はもっとたくさんいて、景気も良くて、その意味では職業選択の自由が実質的に保障されていたころでしたから、それほど問題になりませんでした。
ところが現在は、労働人口の減少が著しく、優秀な従業員は探して獲得するものではなく「導き育てるもの」になってきています。
平成から令和の時代となり、滅私奉公を美徳とする仕事人間は減少し、ワーク・ライフ・バランス(work–life balance 仕事と生活の調和)やディーセント・ワーク(decent work 働きがいのある人間らしい仕事)の確立が重要となりました。
これは、国連で採択された行動計画であるSDGs( Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)の中でもカギとなる要素となっています。
100社あれば100通りの解答がある。
ここに社会保険労務士の仕事の難しさと醍醐味があります。