企業主導型保育施設への労務監査
企業主導型保育事業は、事業主拠出金を財源として、従業員の多様な働き方に応じた保育を提供する企業等を支援するとともに、待機児童対策に貢献することを目的として、平成28年度に創設されました。
しかし、賃金支払いを主とする労務管理が不十分で職員全員が退職して運営できなくなる施設や、経営見込みが甘く設定した定員数の利用こどもが集まらず経営不振となる施設が多いことが判明するなど問題が山積しているようです。
このため内閣府では、「待機児童対策へ貢献すべく量的拡充に重きを置く一方、実施機関が 行う事前の審査、開設後の指導監査等において、保育の質の視点が不足しているのではないか。 その結果、設置者の財務基盤が脆弱であったり、経営見通しが甘いままに開設された施設があり、入所児童の確保や保育士の確保が円滑に行われず、定員割れ、休止等につながったのではないか」との分析のもと、施設の適正運営に向けた「企業主導型保育事業の円滑な実施に向けた検討委員会」を平成30年12月17日に立ち上げ、種々の検討を行っています。
これに対し全国社会保険労務士会連合会では適正運営のための労務監査を提案し、本事業の受託を内定したとのことです。
現在、労務監査のためのツールを検討する委員会を全社連内に立ち上げ、実施に向けた準備を始めているということです。
これにより、企業主導型保育施設に社会保険労務士が立ち入り、賃金不払いをはじめ労務管理上の問題を指摘、指導、助言を行うこととなります。
現在都道府県、市区町村が行っている社会福祉法人等に対する指導監査のうち、労務管理(職員処遇)に関する部門について、いずれは労務監査も担う可能性もあります。
少子高齢化が世界的にも類を見ない速度で進行し、人口オーナス期に入った日本では、保育所が担う役割が重要化しています。
私たち社会保険労務士は、仕事自体が社会貢献に直結することを肝に銘じて、日々研鑽に励む必要があります。
これからも自分と自分の仕事を磨き、品位高く役に立つ人間を目指して頑張らねばと思いました。