田中労務経営事務所  業務日誌

埼玉で社会保険労務士をやっています。日々の業務にまつわるあれこれを綴っていきます。

保育所等が臨時休園等した場合の対応について

f:id:tanaka-sr:20200421204832j:plain

 

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は未だ止まらず、東京都では4月21日の新規感染者数123人増となっており、なかなか鈍化の兆しが見えません。

埼玉県でも累計感染者数が676人にのぼり、特にさいたま市所沢市では100人を超える数になっています。

www.pref.saitama.lg.jp

www3.nhk.or.jp

 

所沢市では4月15日から市内保育園等の全園休園を決め、拡大防止に努力されています。よく思い切ったなと、その決断にエールを送ります。

(もちろん、医療関係者その他ライフラインに従事する保護者は、申請書を出すことにより保育園で預かってくれることになっています。)

 

他の市区町村でも登園自粛の要請は出されており、各園の等園児数はおおよそ3分の1程度というところが多いようです。

 

保育園でも従事者を守るため、また感染拡大を防ぐため、ローテーションで職員さん達を順番に出勤をしない措置を講じています。

方法は、特別休暇にするところ、年次有給休暇で休ませるところ、在宅勤務にしているところ、課題を与えて保育スキル等の向上に役立てようとするところ、いろいろあるようです。

 

で、「保育園も雇用調整助成金を受給できますか?」と聞かれることがあります。

子供を保育園に預けて働いている職員さんも多いので、小学校休業等対応助成金に関するお問い合わせも多いです。

 

登園自粛要請が始まったころは、保育園を運営するための公定価格、補助金等が等園児数に合わせて減額されてしまわないかを行政に確認してもらってました。

認可保育園や認可認定こども園は、自治体からの交付金のみで運営しているため、その交付額が減額されると途端に経営が厳しくなるからです。

 

幸いにして保育所が担う責任の重要性をわかってくれていたのか、登園児数にかかわらず満額の支給をしてくれることになり、ホッとしたのがついこの間のことです。

 

厚生労働省保育所関連のページがあり、情報を取れるようになったのは凄く助かります。

www.mhlw.go.jp

また、委託費収入に関しては、内閣府から新型コロナウイルス感染症により保育所等が臨時休園した場合の「利用者負担額」及び「子育てのための施設等利用給付」等の取扱いについて(事務連絡)」にかかるFAQが発信されており、この通知で確認ができます(最新版は4月14日)。

 

委託費が全額支給されるのですから、少なくとも認可保育所等では雇用調整助成金の支給要件である「前年同月比5%以上の経営指標ダウン」を満たせず、職員を休ませたからといって受給は難しいでしょう。

また、職員人件費は保証されているのですから、売上高の激減等により雇用維持の危機に陥っているわけでもなく、その意味で「平均賃金60%の休業手当」に切り替えるというのは理屈に合いません。

 

というわけで、一部の無認可保育所等を除き、雇用調整助成金を受給する園はないと思います。

問題は、小学校休業等対応助成金ですね。

これは、小学校等が新型コロナウイルス感染症の影響により休校となり、子の面倒を見るため休まざるを得なくなった社員さんを年次有給休暇を使用せずに、通常の賃金を支払って休ませた場合に、かかった費用の10分の10(上限8,330円)支給される助成金です。

 

始めは受給に向かって準備していたのですが、最近「アレ、待てよ」と思い始めました。

上記に書いた通り、認可保育所に支給される委託費は税金を原資とする「公金」です。

制度的に成り立つからといって、公金を使って職員に給与を支払い、その支払ったものに対して助成金という公金を請求してしまっていいのか、疑問に感じました。

公費の二重取りということになるような気がします。

 

少なくとも、正職員については請求すべきではないと思いますが、請求するところはあるんだろうなと思います。

なお、内閣府は、上で紹介した新型コロナウイルス感染症により保育所等が臨時休園した場合の「利用者負担額」及び「子育てのための施設等利用給付」等の取扱いについて(事務連絡)」にかかるFAQの更新版で正式見解を公表する予定という情報がありますので、これを待ちたいと思ってます。

 

また、休業させることで給与支給額の減額を行っている園があったとしたら、それはかなり問題だと思います。委託費の弾力運用が認められているとはいっても、ここはしっかりと職員さんを守り、適正な運営をお願いしたいですね。