田中労務経営事務所  業務日誌

埼玉で社会保険労務士をやっています。日々の業務にまつわるあれこれを綴っていきます。

10,000円札は減 5,000円札は増

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2024年に発行される予定の 渋沢栄一1万円日本銀行

郷土の偉人ですが、政府が進めるキャシュレス政策もあって、その需要に?がつくかもしれません。

 

近時、ネット通販が日常化、普遍化し、キャッシュレス決済が高額な支払いになってきたこと等を原因として、10,000円札の発行枚数が減ってきているそうです。

 

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出典:日本経済新聞

 

2020年度に新規印刷される10,000円札は初めて10億枚を下回る見通しです。

他方、5,000円札は3年連続で増えています。

 

日銀が2020年度に国立印刷局へ新規印刷発注する10,000円札の枚数は、前年比△8%の9億2千万枚なんだそうで、現紙幣が発行された2004年度以降で最も少なくなります。

また、すでに市中で流通している10,000円札の伸びも鈍化しており、2019年度は前年比+2%の約104兆円と9年ぶりに低い伸び率となっています。

 

やはり最近は、小口決済だけでなく高額な支払いについてもキャッシュレスで決済されてきているのが主原因のようで、日銀調査で、5万円以上の支払いにキャッシュレス決済を使用していると回答した人の割合が、2009年には51%だったのに対し、2019年は65%と大幅に増加したことが分かっています。

 

一方で5,000円札はというと、2020年度の新規印刷発注枚数 3億2千万枚で、前年比33%増。

増加率では2013年度の前年比65%増(!)以来の大増刷になっています。

 

これは、すでに慢性化している人手不足を背景に、飲食店等が券売機を増やしているのが主な原因の一つと考えられています。

券売機を製造する企業等で構成される日本自動販売システム機械工業会によると、券売機の台数は2018年までの10年間でほぼ倍増しているそうです。

人手不足もそうですが、ここ2年程は「現金を取り扱いたくない」という店員が増えてきていることも設置増加の一因となっているのは、時代だなあと感じます。

自分が学生の頃にアルバイトしていたころは、「レジ閉め」という作業があり、10円有高が合わなくて延々と売れ上げ記録をチェックし、なかなか帰れなかった記憶があります。

 

で、5,000円が増え10,000円が減っていることについても、券売機では10,000円をお釣りとして補充することはなく(確かにそのとおり)、5,000円札、1,000円札のお釣り需要につながっているということによるようです。

 

現在、流通している最も高額な紙幣は、シンガポールが発行する1万シンガポールドル(日本円に換算して約79万円)ですが、2014年10月に新規発行を中止しているそうです。また、2016年5月には欧州中央銀行から、2018年末を目途に500ユーロ札(約6万円)が廃止されています。

※ 2番目に高額と言われている1,000スイスフラン(約11万3千円)は発行され続けています。

 

高額紙幣を廃止するメリットとしては、

 ①マネーロンダリングの防止

 ②アンダーグラウンドマーケット(現金による闇取引)が減ることによる税収増

 ③偽札犯罪の防止

 ④紙幣製造(回収)費用の削減

 ⑤電子マネーの普及促進

があげられます。

 

日本では、ニセ札防止印刷技術が高く現金への信頼性が高いことや、そもそも治安が良いこと等から世界的にも群を抜いて現金好きと言えます。

その日本で10,000円札の需要が低下していっているということは、今度の新券発行をもって最後の10,000円札となるかもしれません。

 

政府は、キャッシュレス決済の比率を、現在の20%から2025年までに40%へ引き上げる目標を掲げています。

キャッシュレス化が進むとタンス預金も相対的に減る(預金口座に入金されていないと物が買えないわけですから)だろうし、人手不足対応目的の決裁省力化という点でも現金を避ける傾向は進むでしょう。

 

紙幣は、ある意味で発行国の文化やアイデンティを表すものでもあり、無くなっていくのは自分としても抵抗があります。

今回、紙幣の需要ということで、経済動向や消費行動、企業による投資の変化を見ることができました。

これからも、視野を広げて様々なことを考え続けていこうと思います。