特定技能 合格伸び悩む
出入国管理法を突貫工事で改正し、鳴り物入りで整備した「特定技能」ですが、令和2年2月中旬までで合格者数が2400人強と、政府の受け入れ見込み4万人を大きく割り込んでいることが報道されました。
海外合格者の第1陣は今年4月に来日する予定ですが、送り出し側のアジア諸国からは、日本の拙速な制度導入に批判の声も上がっているようです。
特定技能は、2019年4月に新設した在留資格で、人材不足が深刻になっている介護、建設、外食、農業等14業種で外国人労働者を受け入れることができるものです。
最長5年間の在留を認める「1号」と、家族の帯同や在留資格の更新を認める「2号」があります。
初年度受け入れ見込みは最大4万人、5年間で約34万5千人受け入れを見込んでいました。
2019年4月には法務省入国管理局を格上げして在留外国人の一元管理・支援を行う「出入国在留管理庁」を設置したあたりに、政府の本気具合いが見て取れます。
見て取れますが、残念ながら出だしコケましたね。
最も合格者数が多かったのは「介護」で、昨年4月のフィリピン、その後カンボジア、インドネシア、ネパール、モンゴルで試験が実施されています。
約3000人が受験したそうですが、合格者が1400人でうち85%をフィリピン人が占めたということです。流石はフィリピン。
その後外食等順次試験が行われ、3月に建設等の試験が行われて14業種が出そろう予定です。
海外受験者のほか、日本で3年間の技能実習を終了して特定技能に切り替えた人や日本での試験に合格した外国人もこの在留資格を取得できます。
昨年12月末に特定技能で日本に在留する外国人は1621人。そのうち9割は技能実習からの切り替えということです。
とはいえ、4月に入国してくる海外受験組を合わせても1万人を下回る見込みですから、目標達成率は超低調。
技能実習だと最低賃金以上であればOKなのですが、特定技能だと日本人と同等以上の待遇が求められます。また、技能実習では認められていない転職が認められるなど、主な就職先となる中小企業にとっては「あえて採用するメリット」が薄く受け止められてしまうリスクを抱えています。
実際、賃金水準が低くて転職しない技能実習を求める声が多くなっています。
そのせいなのか、まあ、そのせいなのでしょう、2018年度の技能実習生は367,709人でしたが、2019年度は400,000人を超える予想です。
もともと見切り発車といわれている制度で、今年度は準備期間のつもりかと思いますが、最大の送り出し国と想定されていたベトナムで現地手続が滞っているのは大きな誤算になっているものと思われます。
日本語試験等に合格しないとならないので、渡航希望者にとってもハードルはかなり高いし、準備不足で送り出し側のアジア各国で手続きの遅れが響いている現状からすると、劇的に改善することは難しいでしょう。
この制度を安定的に継続しようとするならば、まず送り出し側の国に養成のための仕組みを作り上げないと無理だと思います。
分かりにくい制度で渡航資格を取り、異国で働くというのは外国人の方たちにとってもリスク高いと思います。お金もかかるだろうし、渡航までに時間がかかりすぎます。
また、受け入れ側企業にとっても、特に地方の中小企業にとって転職リスクは看過できない難点です。
既に全世界的に人手不足となりつつある中、働き手の受け入れ先としてシンガポールや韓国よりも魅力的な働き先となることができるのか、更に本腰を入れた対応が必要と考えますが、さて、次の一手はどう打ってくるのか、注目していきたいと思います。