田中労務経営事務所  業務日誌

埼玉で社会保険労務士をやっています。日々の業務にまつわるあれこれを綴っていきます。

傷病手当金・出産手当金が重なりまして

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このところ、切迫流産の恐れ等により出産予定日の6週間より前から休業される方がいらっしゃいます。

自分の母親の世代は「私たちは産休なんてほとんど取れず、出産の直前まで働いて、産後も子供をおぶって会社へ行ったわ」なんていってましたが、時代は令和です。

出産・育児支援です。

しっかりサポートしなければ。

 

というわけで、傷病手当金を受給していた妊婦さんが予定日よりも早く出産されると、産前休暇期間が繰り上がります

そうすると、出産手当金の対象期間と傷病手当金の対象期間が重複します。

 

 これについて、平成28年4月に少し法律改正がありました。

 

(第103条 出産手当金と傷病手当金との調整)
出産手当金を支給する場合(第108条第3項又は第4項に該当するときを除く。)においては、その期間、傷病手当金は、支給しない。ただし、その受けることができる出産手当金の額(同条第2項ただし書の場合においては、同項ただし書に規定する報酬の額と同項ただし書の規定により算定される出産手当金の額との合算額)が、第99条第2項(傷病手当金の額)の規定により算定される額より少ないときは、その差額を支給する
2 出産手当金を支給すべき場合において傷病手当金が支払われたときは、その支払われた傷病手当金(前項ただし書の規定により支払われたものを除く。)は、出産手当金の内払とみなす
 
原則 → 出産手当金を支給する場合、その期間傷病手当金は支給しない
例外 → 出産手当金が傷病手当金より少ない場合はその差額が支給される
 
ということですね。
 
改正は「例外」部分のみです。
これは、両所得補償給付の日額の計算方法が変更になったことから派生的に変更になった部分。
 
「標準報酬日額(標準報酬月額×30分の1)」×3分の2
        ⇩
傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額を平均した額×30分の1」×3分の2
 
傷病手当金と出産手当金とで、「直近の継続した12月」の起算月が異なるので、差額が発生することがあるんですよね。
 
今回のような場合、やることは以下のとおり。
 
①産前休暇期間(繰り上がった出産日前6週間)の確定
 ※保険料免除期間も繰り上がっていないかも確認  → 変更届は産後休業期間中に!
②出産手当金申請の準備(本人への通知と出産証明依頼)
③直近12ヶ月の標準報酬月額を調べて、差額発生の有無を確認。申請期間の初日に属する月まで現事業所での12ヵ月の資格期間がない場合は、もう一度「別添」を添付

これを添付

雇用保険育児休業給付金の必要書類とともに、本人へ通知

 

けっこうやること、ありますです。

でもこのあたりを丁寧にフォローするのが、専門家としての社労士の仕事ですよね。

 

 

そういえば、「世界労働専門家協会」というものが令和元年6月に発足したとか。

日本、イタリア、カナダ、スペイン、ポルトガル、韓国の6か国で創設するとか。

 

ハッキリは情報や進捗が分かっていないのですが、社会保険労務士の国際化(国際ライセンス化)を目指すとのこと。

欧米なんかでは、僕たちがやっているような手続きは弁護士(事務弁護士 Solicitor)がやっているんですよね。

イギリス、アイルランド等では、法律専門職は法廷弁護士と事務弁護士とに分かれており、いずれか一つの資格しか持たないのが通常

そのあたりと張り合ってやっていけるのか、労務管理に関する専門資格を持っている6か国で国際的な地位向上、業務拡大を図っていきたいということです。

 

僕も良くわかっていないのですが、これからは社会保険労務士バイリンガルトリリンガルが必須となるかもしれませんね(@_@;)

我が心より敬愛する埼玉会会長がこのあたりを担当されるらしいので、がんばっていただきたいです。