田中労務経営事務所  業務日誌

埼玉で社会保険労務士をやっています。日々の業務にまつわるあれこれを綴っていきます。

Rocket Man

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Elton Johnといえば、「Your Song」「Goodbye Yellow Brick Road」は知ってるよ。ああ、ダイアナ妃の葬儀でエルトンが「Candle in the Wind」を歌ってたね、くらいの興味しかなかったのですが。

 

ロケットマンいい作品でした。

 

大ヒットした「ボヘミアン・ラプソディ」と同じく、天才ミュージシャンの半生を描いた(らしい)、挫折と孤独、再生を描いた作品で比較してあれこれ論評する向きも多いですね。監督も同じだし。

役者陣がすごく頑張っていて、ものすごくいい演技をしているという点では甲乙つけがたいと思います。

ボヘミアン・ラプソディでフレディを演じたラミ・マレックの完コピぶりは凄かったです。ステージ上のパフォーマンスもパーフェクトでしたが、ステージへのアプローチでの歩き方とか、まさにフレディ・マーキュリーでした。

対して、ロケットマンでエルトンを演じたタロン・エガートンタロン・デヴィッド・エジャトン・・ピアノも弾いて全曲口パクなしで自分で歌っているんですよね。これがすごく上手い。桁違いの歌唱力です(*^_^*)

SING/シングの中でもゴリラのジョニー役で「I'm Still Standing」を歌っているというのは後で知りました。

Taron Egerton - I'm Still Standing - YouTube

  

Your Song がこの世に生まれる場面が前半部のピークとして印象的に描かれています。
誰もが知ってる名曲です。

特にHow wonderful Life is while you're in the world」のところがいいです。シンプルでいて、でも本当に愛にあふれている歌詞で、この映画を観る前から好きな曲です。

「君がこの世界にいるだけで、人生はなんて素晴らしいんだ」なんて素敵じゃないですか。

こんなふうに思える人がいれば、一人でもいれば、辛いことなんて一つもないだろうなって思います。

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作詞は、エルトンとともに数多くの名曲を書いているバーニー・トーピンですが、この人も天才。

この時からずっと作曲はエルトン、作詞はバーニーという完全分業で数多くの楽曲を製作してきたということでしたが、エルトンがゲイで、この詩を書いたバーニーのことを愛していて、彼のことを思いながら曲を、あんなに美しいメロディを書いたというところに打たれました。

実際、好きな人からあんな歌詞をもらったら、そりゃあ嬉しいですよね。

でも真実は・・・二人は生涯の親友なんだけど、バーニーにその気は全くなくて。

けして受け入れてはもらえない、絶対にかなわない思いなんです。

 

今でこそLGBTQが認められ、その人権を重んじるべきという世の中になりましたが、同性愛が禁じられていて、偏見も大きかった時代に誰にも受け入れられない孤独を抱えて落ちていくというのは相当に厳しいと改めて感じました。

ボヘミアン・ラプソディでもこのあたりは掘り下げて描かれています。

デクスター・フレッチャーに変わる前のブライアン・シンガーという監督もゲイだったということなので、理解や表現に特別なものがあったのかもしれません。

 

 

ロケットマンでは、エルトン自身も監修をしています。

なのでストーリーと曲とがマッチしているのが気持ちいいです。そして、その場面でその曲を使うということが、曲を作った人自身の意思として伝わります。

この映画はミュージカルですから突然登場人物が歌いだしたり、踊りだしたりしますが、この選曲が良くて、この映画を見て、その曲の真の意味が理解できたと、そんな気になりました。

 

その意味では、やっぱりこの映画は「Your Song」でも「Goodbye Yellow Brick Road」でも「Can You Feel the Love Tonight」でもなく、Rocket Manなんだろうなと思います。

 

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この曲(ロケット・マン)では

I miss the earth so much, I miss my wife
It's lonely out in space on such a timeless flight

地球がとても恋しい、彼女(妻)が恋しい。宇宙では孤独だ。こんな時間のない飛行の中では)

Rocket man, burning out his fuse up here alone

ロケット・マンは、孤独の中で燃え尽きる)

And I think it’s gonna be a long long time

(燃え尽きるのは、ずっと、ずっと先のことだけど)

 

とどこまでも一人きりで、いつ地上にもどれるか分からない状態に、エルトンの底知れない孤独が重なります。

燃え尽きる・・・死ぬこともできない永遠の孤独

 

映画評論家の町山智浩さんがこのあたりを言ってます。

町山さんの批評もすごいと思いました。

(ロケット・マンは、バーニーがレイ・ブラッドベリ「刺青の男」(1951年)という短編集に収録されている「The Rocket Man」に触発されて詩を書いたといわれています。町山さんはロケット・マンのくだりで「ロケットから放り出されて、生命維持装置だけついた状態で宇宙空間に放り出されいてる状態です。」っておっしゃってますが、大破した宇宙船からさまざまな方向へと放りだされた乗員たちが宇宙服の通信装置を介してそれぞれの運命を伝えあうのは、同じく「刺青の男」に収録されている「万華鏡」という作品です。)

レイ・ブラッドベリは昔けっこう読んだんですよね。

  SF読みとしては、ブラッドベリの話ができるのは嬉しい。

 

ロケット・マンは、数えきれない数の名曲を誇るエルトン・ジョンの楽曲の中でも5指に入る大好きな曲の一つです。

この曲"ロケット・マン"の発表のあと1973年にエルトンは自身のレコードレーベルを設立しますが、"ロケット・レコード"と名付けるほどですから、エルトンにとってもこの曲は特別なものだったと思います。

 

 

エルトン・ジョンの曲って、メロディが美しくて、聞きやすくて、声も良くて、歌詞が分からない日本人としては「いい曲だなあ」で終わってしまうのですが、今回の映画をきっかけに歌詞をよく読んでみると、バーニーさん、結構エグイことをエルトンに歌わせてるのですね。

先に作詞があって、そこに曲を付けていく手順らしいのですが、孤独や、飲酒や、ドラッグで精神的にも肉体的にも滅茶苦茶な状態なのに、あんな素晴らしい曲を生み出してしまうところに、天才は天才でしかないなぁと少しため息すら出ます。

 

 

大ヒット・ロングラン公開されたボヘミアン・ラプソディでは、家族ともいえるメンバーとグチャグチャになった後、救われ、分かり合うことができて、ライブエイドで復活するというフィナーレをラストシーンに持ってきていますから、そりゃ盛り上がるというものです(実際、史実とは違うらしいですが)。

 

対してロケットマンでは堕ちるところまで堕ちたエルトンが更生施設に入って自分を取り戻し、一時離れていたバーニーと再び友情を取り戻すところまでを本編では描いています。

その後にI'm Still Standing がかかるというのが素晴らしい

まさに「まだ負けてない、終わっちゃいない」という叫びですよねヽ(^o^)丿

そこからのカムバックを象徴する演出ですが、劇中ではこの曲のMVがタロン・エガートン版で再現されています。

それまでのエルトンの生涯、カミングアウトするまでの孤独や、した後の混乱を考えるとスゴイMV(ディレクターのRussel Mulcahyによると、このMVは「ゲイ度100% (super, super, super gay)」なのだそうです・・・確かに) を撮ったもんだなと思います。事情が分からなくても、はっちゃけてて面白いですけど。

 

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で、大盛り上がりした後、その後結婚し、ツアーからは引退して幸せにしているというところは描かれず、後日談ぽい感じで、ラストクレジットのところでサーっと流して終わります。

そこはそれで済ませていいのか、カタルシスに欠ける、表現が雑だという向きもあるようです。

 

ただ、45歳という若さで急逝したフレディと違い、エルトン・ジョンは、自分を理解してくれるパートナーと出会い、二人の子供と幸せに暮らしている、いわばハッピーエンドの人生を得られたわけで、「これでいいんじゃないの?」と僕としては思います。

 

劇中では前半部に、父母から全く愛情を受けられなかったエルトンの心の叫びとして    I Want Love が歌われましたが、この曲、実は2001年のリリースです。

で、この曲のMVを製作するにあたり、エルトンは薬物依存でリハビリ施設の入っていたロバート・ダウニー・Jrに出演のオファーを出しているんです。ダウニー・Jrにとっては復帰初演技ですが、長回しですごくいい映像になってます。

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こんなふうに、自分と同じ境遇で苦しんでいる人へ贈り物ができるくらい幸せになっているのは、見ているこちらもホンワカしてきます。

 

だから、やっぱり、この映画は「ミュージカル」で、エルトンが生涯の親友であるバーニーと絆を取り戻し、本当の自分として生きていくことができるようになったこの場面でラストというのがベストなんだと思います。

 

奇抜で、ド派手な衣装ということも含めて、やっぱりエルトン・ジョンという人は、稀代のエンターテイナーなんです。

 

まだ見てませんが、本作の前にエルトンとタロン・エガートンが共演しているキングスマン ゴールデン・サークルでは心底楽しそうに劇中の役(本人役!)を演じているそうです。

早く見ることを勧められていますが、まだ観ることがかなわずにいます。

 

遅ればせながら、エルトンのたくさんの名曲を聞き始めました。

 

ライオンキングで有名なこの曲「Can You Feel the Love Tonight」も良いよね。

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どうしたらこんな曲「Sorry Seems To Be The Hardest Word」が書けるんだろう。

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 「Goodbye Yellow Brick Road」忘れてました。

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ちょっと前まで「エルトン・ジョンエリック・クラプトンが時々ごっちゃになる」なんて言ってた(冗談ですよ)人間とは思えない傾倒ぶりに、自分でも少し呆れています。

まあ、それだけエルトン・ジョンの楽曲が素晴らしいっていうことで許されたいです。