田中労務経営事務所  業務日誌

埼玉で社会保険労務士をやっています。日々の業務にまつわるあれこれを綴っていきます。

保育士宿舎借り上げ支援事業 → 労働保険料

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保育園宿舎借り上げ支援制度事業の絡みで、社会保険料算定をするときの現物給与取扱いについて、15日のブログで書きました。 

tanaka-sr.hatenablog.jp

 

今回は、労働保険料労災保険料雇用保険料)の取扱いです。

 

労働保険では現物給与について、通達(昭和22.9.13基発17)で次のように取り扱うよう指示しています。
 
現物給与は次の2点において、原則として「賃金」に当たる。
① 所定貨幣賃金の代りに支給するもの(その支給により貨幣賃金の減額を伴うもの)
② 労働契約において、予め貨幣賃金の外にその支給が約束されているもの
 
ただし、次の2点に当たるものは、例外として「賃金」に当たらない。
① 代金を徴収するもの(ただしその代金が甚だしく低額なものは別)
② 労働者の厚生福利施設とみなされるもの
 
このように福利厚生として住宅施設を無償で供与されている場合、原則として賃金とされません。
 
ただ、ややこしいのは、住宅の貸与を受けていない者に対して均等手当(住宅の貸与を受けている人はタダで住めて、そうでない社員は住居の費用を自己負担するというのでは均衡に失するので、住宅を貸す代わりに金銭でバランスを取る目的で支給する手当)が支給されている場合です。

住宅の貸与を受けていない者に対して均等手当が支給されている場合は、通達(昭30・10・10基収2386号)で次の取扱いとなります。
例外の例外ですね。

「住宅の貸与を受けない者に対して定額の均衡給与(住宅を貸与されている者との均衡上支給されるいわゆる住宅手当)が支給されている場合には、住宅貸与の利益が明確に評価されているのであるから、その評価額を限度として住宅貸与の利益を賃金として取扱う。」

例えば、家賃6万円の住宅を会社から無償で貸与されている人に対し、持ち家に住んでいる社員には3万円の住宅手当が支給されていたとすれば、3万円(均等手当の額)が賃金とみなされるんですね。
 
だがしかし!
に、「均衡給与が支給されている場合であっても、均衡給与の3分の1以上の額を住居の借料として徴収する場合には、福利厚生施設とみなす。」(昭30・10・10基発644号)という通達があります。
例外の例外の例外か!

持ち家の従業員には3万円の均衡給与を支給し、家賃6万円の住宅の貸与をうけているものからは1万5千円の家賃を徴収していた場合、結局は「賃金」に当たらないことになります。
均衡手当としての住宅手当は当然「賃金」に当たりますが、6万円-1万5千円=4万5千円の利益を受けている従業員の住居の利益は「賃金」に当たらないというのは、なんとなく腑に落ちませんね。
 
なお、均衡手当の3分の1未満の額を賃料として徴収していた場合は、実際の費用の3分の1と賃貸料の差額が「賃金」となります。