GPIFによる公的年金の運用 14兆8039億円の赤字と発表
「国民年金や厚生年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は1日、昨年10~12月期の運用実績が14兆8039億円の赤字だったと発表した。四半期ベースでの赤字幅としては過去最大となった。米中の貿易摩擦などによる世界的な株安で、国内外の株価が大幅に下落したことが要因。急速に円高が進み、外貨で運用している資産が目減りしたことも影響した。
利回りはマイナス9.06%。12月末時点の資産総額は150兆6630億円。ただ、2001年に市場運用を開始して以降の利回りはプラス2.73%、累積収益額は56兆6745億円のプラスとなっている。」
ということで、赤字、赤字とニュースになっています。
確かに「14兆円の損失」ってすごいですけど。
ですが、単年度の赤字や黒字は年金制度維持にとって根源的な問題ではないのです。
そりゃあ、原資の一部として積立金が多いにこしたことはないですけど。
それに、GPIFも今の年金財政下ではリスクを取りに行くしかないわけで、今回みたいな大暴落があれば、この結果も仕方ないところです。
これは厚生労働省からの引用(H27年度)ですが、
① 国民からの保険料 :35.1兆円
② 年金に対する国庫負担 :12.2兆円
③ 受給者に対する年金支給額:54.2兆円
働く世代の保険料(①)と国の負担(②)を合わせた金額が約47兆円に対して、年金受給者への支給額(③)は約54兆円で、その不足する金額約7兆円について年金積立金を取り崩している計算になります。
この不足額を年金運用でカバーするとなると、単純計算で年率15%での運用利回りをとる必要があります。
ですから、今の年金制度を維持するには、
ア:年金支給額を減らす
イ:保険料(税)を上げる
ウ:毎年年率15%以上で積立金を運用する
の3つしか手がありません。
今までも、年金支給額を減らしつつ、保険料を上げてきましたが、デフレから脱却しきれていない現状でさらに保険料を上げると、景気回復への悪影響が大きすぎるというのはみんなが分かっているところです。
また、今時、年率15%なんて高利回りで資金運用するなんて、悪いことでもしない限り現実的ではありません。
じゃあどうするかと言えば、支給開始年齢を70歳とかにするということになるのでしょうね。
1月9日の日本経済新聞1面に「公務員60歳から給与7割」という記事がありました。
著作権の関係でここには貼れませんが、定年を65歳にするということはほぼ確定しているということですね。
公務員をまず引き上げて、その波及効果で民間を変えるというのは、以前から行われてきた常套手段ですが、日本ではものの見事に通用するから、今回もそこを睨んでのものと思われます。
今年は第25回参議院通常選挙がありますから、とりあえず一律引き上げとはいわず、「70歳以降にも繰り下げ制度(選択制)を延長する」という言い方になっていますが、我々社会保険労務士としては、政策の方向性をしっかりと把握していく必要があります。
今回は、少し硬派な感じになりました。
趣味で書いているブログなのであしからず。